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撥鏤(ばちる)


正倉院所蔵撥鏤復元作品(尺と棊子)

インド茜と臙脂の重染による染付を行った復元撥鏤撥


 「撥鏤(ばちる)」とは象牙(ぞうげ)を紅色や紺色に染め、表面を彫刻して白い象牙の素地(そじ)をあらわすことで図柄や文様を表現する工芸技法です。撥鏤技法の起源は明らかではありませんが、中国・唐代(8世紀)に最盛期を迎え、日本では奈良時代に隆盛しました。正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)にはこの技法が施された撥鏤作品が数多く収蔵されています。しかし、撥鏤技法は奈良時代を最後にわが国では行われなくなり、中国においても唐代が最後であったため、千年以上にわたってその技法は途絶えてしまいました。明治時代になって正倉院宝物を基にして撥鏤技法が復元され、1985年には工芸技術として吉田文之氏が国重要無形文化財に指定されております。
 村松親月(むらまつしんげつ)氏は特に撥鏤の染色方法を重視し長年検討を重ね、染色方法の復元を行いました。村松氏の作成した撥鏤作品と撥鏤染色過程サンプルは奈良国立博物館に寄贈され、同館の展示においてしばしば公開されるなど貴重な収蔵品となっています。その撥鏤技法の復元は、現時点での最高峰にあると考えられています。
 なお、これまで村松氏の長年の研究では、臙脂(えんじ)は象牙に染料が浸透しないことから、赤色の染料について、インド茜であるとされてきました。しかし、正倉院事務所が正倉院に収められている撥鏤の可視分光分析を行ったところ、赤色の染料は臙脂であるとの分析結果が公表されました(「正倉院紀要」第35号)。この結果を受けて、村松氏は再度研究を重ね、インド茜で染色後に短時間臙脂で染色することにより、臙脂が被膜としての効果を発揮しており、可視分光分析では臙脂の成分のみが検出されたものとの見解に至っています。このように、失われた古(いにしえ)の技の復元は、長い時間をかけ、今も続けられています。



ぶんかざいほじしゃ:むらまつふじお 技芸等の内容
  1.生地取り 2.整形 3.研磨 4.染め付け 5.彫刻 6.点彩

使用する道具の概要
  1.生地取り…象牙用の鋸(ノコギリ)
  2.整形…象牙用の鑢(ヤスリ)・鉋(カンナ)
  3.研磨…木賊(トクサ)、椋(ムク)の葉、粒子の細かい磨き砂
  4.染色…インド藍液(藍色)、インド茜の根の粉末を溶かした液(赤色)、臙脂(ラック・カイガラムシの抽出液、赤色)
  5.彫刻(撥ね彫り)…ベンガラ、彫刻刀
  6.点彩…緑青をアンモニア液で溶かしたもの(緑)、くちなし(黄色)等

文化財保持者:村松藤男氏(雅号:親月)

指定区分
太田市重要無形文化財
指定年月日
平成23年7月21日
所在地
太田市金山町31-7

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