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令和6年7月1日号「広報おおた」では、令和6年7月26日から開催のパリ2024オリンピックに出場する三浦龍司選手
(SUBARU陸上競技部、3000mSC ※SC=SteepleChaseの略で「障害物競走」のこと)、
パリ2024パラリンピックに出場する唐澤剣也選手(SUBARU陸上競技部、5000m・1500m)のインタビューを掲載しています。
本ページでは「広報おおた」に載せきれなかったパリ2024意気込みや今後の予定、ご自身のエピソード、今の気持ちなどに答えていただいています。
また、2選手に加えて奥谷亘監督や唐澤選手のガイドを担当されている小林光二コーチにもお話を伺いました🎤
(インタビュー日:令和6年5月31日)
ーーオリンピックでどんな走りを見せたいですか?
いつも通りに走りたいですが、メダルを獲るというところは東京五輪の時とは違います。あと、やっぱり自己記録更新は目指したいです。
ーーオリンピックまでの今後の予定は?
早い段階で内定できてホッとしたので、これから準備の時間に充てられるのはとても有意義だなと思っています。
試合はあと1戦、海外レースに行ければと思っています。それ以外は合宿です。
ーー世界の選手の勢力図はいかがですか?
モロッコのエルバカリ選手、エチオピアのギルマ選手が抜けています。そのあとを追いかける勢力に、自分はいます。
選手それぞれに走り方の個性、違いがあって、自分のパフォーマンスが最大限出せる走り方をする人が勝てるのだと思います。そこはもう、誰がというのは予測不可能だと思います。
ーー今後はどんなトレーニングをしますか?
もうこの時期なので今までやってきたことをやるのと、自分の特長や武器に磨きをかけるということに集中します。
ーー自然豊かな島根県浜田市出身。野生児エピソードがあれば教えてください。
野生児エピソードというのか分かりませんが、川遊びは日常でやっていました。木登りも。
周りは全部、山だったので、遊び場には事欠かなかったです。
海も近い。海、山、川、全部制覇しています。体を動かすには、田舎ほど優れている環境はないと思います。
そこはやっぱり、僕の体を作ってくれているので良かったのかなと思います。
ーー小学生の時、縄跳び大会で優勝したそうですね。
小学生時代の地区大会ですけど、体操大会があってその中の一環で縄跳び種目がありました。
そこに出た時に跳べてしまったので、その話をよく聞かれます。この時は、跳び箱でも金賞を獲りました。
小学5年生だったと思うのですが、二重跳びで6分ぐらいずっと跳んでいたことがありました。
縄跳びは、その大会の大会記録になりました。「ゾーンに入った状態」になってたのかもしれません。
一人だけずっと跳んでいたんで、早く終わらないかなと思われていたはずです。
終わる気がしないので、もう自分で止めました。まだあと2分はいけたと思っています。
ーー3000mSCを初めて走った時は、怖かったですか?
はい。本当に怖かったです。
連続でレースに出て、だんだんペースが分かってきて、タイムが伸びてくると楽しくなっていきました。
ーー三浦選手から見た、3000mSCの魅力は何ですか?
ほかの長距離種目にはない、障害物を超えていく動きです。
障害の中にも普通のハードルと水濠という2種類がありますが、特に水濠はレースの劇的な変化がありうるんです。
見せ場、醍醐味といえばやはりそこ。一番盛り上がるところだなと思っています。
選手としては、障害物や水濠は、今でも怖いなって気持ちはもちろんあります。
ーー三浦選手はなぜ、走っている時の姿勢があんなにいいのですか?
小学校で、姿勢を良くしなさい、背筋を伸ばしなさい、と厳しく言われていて、僕も意識していたからだと思います。
つまり、たまたまです。速く走るために姿勢を良くしようと思ったわけではありません。
ただ、結果的には、陸上競技やる上では非常にいいと思います。
ーーパリ五輪での活躍を楽しみにしている皆さんに、意気込みをお願いします。
3000m障害というのは中長距離の中でも特殊な競技ですが、最近は関心や注目が高まってきています。
その中で迎えるオリンピックというのは、3000m障害の魅力を知ってもらう大きなチャンスだと思っています。
今年はメダル獲得を目標にしているので、その目標を達成し、いい結果報告ができるように頑張りたいです。
ーーパリ2024パラリンピックでの最大のライバルはどなたですか?
ブラジルのジャッキス選手とドスサントス選手です。5月に行われた神戸大会で金メダル、銀メダル取った2人です。
2選手ともスピードがあって、神戸大会ではロングスパートをかけられて引き離されてしまったので、
そこを対応するのがパリパラリンピックでの金メダルにつながると思ってます。
ーーパリではどんな走りを見せてくれますか?
海外選手はスピードがありますので、スピード勝負になるとちょっと分が悪いんです。ただ、私はスタミナには自信がありますので、最初から積極的に攻めてスタミナ勝負にしたいと思っています。
ーー5000mと1500mではペース配分の調整は違いますか?どちらが難しいですか?
いやー、両方難しいですね。海外の選手は結構スピードがあり、それについていくのは厳しいところがあるのですが、自分の良さを活かせるようなレースができればいいなと思っています。
ーー2021年に、小林光二コーチと初めて一緒に走った時の感想は?
小林コーチと初めて走った時はフォームがぴったり合って、リズムも取りやすくて、本当に一人で走ってるかのような感覚で走れました。
ガイドランナーとの気の合わせ方というのは、競技において重要なポイントの一つです。
選手が走りやすいフォーム、リズムで走れると、やはり速く走れます。
その点、小林コーチと走ると、私一人で走ってるかのように楽に走れます。
小林コーチと初めてレースに出た時に5000mで自己ベストが出ました。
ーー走っているときに、ガイドの方とお互いの調子は敏感に分かるものですか?
普段から練習は共にしていますので、お互いの調子なんかは分かっています。ガイドの方が私をうまくリードしてくれて、走ってくれています。
ーー唐澤選手は群馬出身。群馬の皆さんからの期待も高まっています。
生まれも育ちも群馬県で群馬県が大好きです。地元の応援がとても力になっています。
地元の皆さんに良い報告ができるように、しっかりパリの舞台で走って金メダルを獲得し、披露したいと思います。
ーーガイドランナーを務める小林コーチへ、一緒に走る中で唐澤選手の体調はやっぱり敏感にわかりますか?
そうですね。きつくなってくると歩幅が縮まってきたり、テザーの感覚がズレてきたり重くなってきたりするので、すごく手先で感じますね。
ーーお互いになんと呼び合っていますか?
からけんさん(笑)からけんさんは特に試合中しゃべらないです。
ーー小林コーチから見て、唐澤選手の走りの魅力はどこにあると感じますか?
陸上選手として重要なポイントがケガをしないことです。
からけんさんは、ケガに強いです。かなりの練習量を積むタイプなんですが、あまりケガをしない。
逆に言うと、ケガをしないので練習をかなり積むことができ、その結果世界でトップで戦える選手になっています。
ーー唐澤選手本人は、スタミナに自信があるとおっしゃっていますが、コーチから見てその点はいかがでしょうか。
からけんさんは1カ月500~600キロを走りますので、スタミナには自信がつくと思います。
ーー必勝パターンを教えてください。
神戸世界パラではブラジル勢にスロー展開に持ち込まれたうえ、ラストのたたき合いに負けてしまいました。
また、ブラジル勢のみならず他国の選手も力を付けているのが分かりました。
そういう意味では他国のレベルの状況、自分たちの今の立ち位置っていうのがはっきりわかったので、
神戸世界パラの結果をかなり前向きに捉えて、対策を立て修正していきます。
神戸では悔しかったです。パリで勝って、やっぱり唐澤ペアは強いってことを発信したいですね。
ーー三浦選手、唐澤選手の勝利のポイントを教えてください。
三浦選手について
見どころとしては、3000mSCではエルバカリ(モロッコ)とギルマ(エチオピア)の2選手が図抜けていて、その後を追いかける層に三浦選手はいます。
勝負は何が起こるか分かりませんが、超一流の選手というのは狙う試合にビシッと合わせてきます。
そういうなかで、三浦選手がエルバカリ、ギルマ選手との争いにからんでくればメダルが見えてくると思います。
唐澤選手について
神戸世界パラでブラジル勢らのライバル達が「唐澤対策」を練ってきたことが分かりました。
逆に言うと、今度は相手の思い通りにならないように対策するということに気づかせてもらえた大会だったと思います。
いま唐澤選手はコーチ陣と今後どうやっていくかを練っています。
本人と話しても、神戸ではスローペースに進んで一気にスパートをかけられて引き離される展開だったので、逆に言うと、ある程度のハイペースで自分がレースを作っていき、一気にラストで上げられない状況にし、互角の状況で最終局面まで持っていければ金メダル争いができるでしょう。
ーーSUBARU陸上競技部の地元、太田市民にコメントをお願いします。
私は責任者ですが同時にファンのような気持ちもあって、2人の壮大な挑戦にワクワクドキドキしています。
彼らは国を代表する選手で、モチベーションも本人たちそれぞれしっかり持っています。
逆に言うといかにここからトラブル無く、1番自分たちのパフォーマンスを発揮できる状態をつくってもらえるように、
我々としてはサポートをしっかりやりたいですし、悔いのない状態でスタートラインに立ってもらうのが1番かなと思っています。
群馬、太田の皆さんにも、ぜひワクワクドキドキしてもらいたいと思います。
1998年創部。
2011年2月1日より奥谷コーチ(当時)が監督に就任。全日本実業団対抗駅伝競走大会(ニューイヤー駅伝)には2001年の初出場から20年連続出場。
2021年度に過去最高順位となる2位(準優勝)を達成。
ニューイヤー駅伝で沿道からの応援を背に選手が駆け抜ける姿は、太田市のお正月の風物詩として親しまれています。
スバル陸上競技部の詳細はこちらをご覧ください。<外部リンク>