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放送作家 岐部昌幸さんにインタビュー! (広報おおた令和7年7月15日号掲載)
近年注目されているeスポーツとは?
「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、ゲーム機やパソコンを使って対戦する競技のことです。自宅にいながら気軽に楽しめることから、年齢や性別を問わず人気を集め、今では世界大会が開かれるほど注目されています。
本市では20歳以上の人を対象としたeスポーツのイベントを令和7年8月30日、土曜日に開催予定(事前申し込み制・先着100人)です!
そのイベントにゲストとしてお迎えするのは太田市出身の放送作家、岐部昌幸さん。テレビ番組の構成やゲームの脚本、小説の執筆など幅広いジャンルで活躍されています。
広報おおた令和7年7月15日号では、そんな岐部さんにインタビューを行いました。ここでは、紙面に記載しきれなかったインタビュー内容をお届けします。
岐部昌幸さんにインタビュー!
プロフィル
本市出身の放送作家。群馬大学卒業後上京、人気番組「シューイチ」、「秘密のケンミンSHOW極」、
ゲーム実況の元祖「ゲームセンターCX」などの構成を手掛ける。著書に太田市を舞台にした「ボクはファミコンが欲しかったのに」
「かいけつゾロリシリーズ ナゾロリ」など。
※岐:岐部昌幸さん 、イ:インタビュアー
Q.eスポーツの魅力は何ですか?
岐:実際のスポーツだと対戦が難しい人でもeスポーツではどんどん試合を勝ち抜いていったり、老若
男女を問わずみんなでプレイできて楽しめる―それがeスポーツの一番の魅力だと思います。
イ:確かに実際のスポーツでは、年齢や性別以外にも体力や経験の差が出てしまうので、なかなか皆で
同じものをプレイするって難しいですよね。でも画面上の操作なら、そういった差をあまり感じる
ことなく、みんなで一緒に盛り上がれそうですね。
岐:それにゲームを全く知らなかったとしても、実力者同士の真剣勝負って、その熱量の大きさに思わ
ず引き込まれるんですよ。普段はあまり見ないスポーツでも、オリンピックだとつい見入ってしま
う…あの感覚に近いですね。まだeスポーツを見たこと・やったことない人にも、まずはそのワク
ワク感を味わってほしいです。今後、初めての方でも気軽に参加できて楽しめるようなイベントを
企画したいと考えています。ぜひ多くの方に参加していただきたいです。
Q.eスポーツに携わるようになったきっかけは何ですか?
岐:ゲームの仕事について取材を受けた記事を県庁のeスポーツ担当の方が目にしてくださり、「今度
eスポーツの実況No.1を決める大会を開くので、審査員をやりませんか」と声をかけていただきま
した。それをきっかけに、eスポーツに関わる機会がぐっと広がりました。
イ:プレイするだけではなく、実況もされるんですね。これまでにされたeスポーツの実況やプレイの
中で、一番面白かったことを教えてください。
岐:やはりトップ選手の対決は見応えがありますね。のほほんとしたパズルゲームだと思っていたら、
お互い芸術作品のように美しくピースを積み上げては、一気に連鎖で消し合う―そんな見惚れる
ような展開が続いたり。そういう瞬間を目の当たりにすると、ゲームが持つエンターテイメント
としてのポテンシャルの高さに驚かされます。私が子どもの頃は「ゲームばかりしていたらダメ
な大人になるよ」なんて言われていたのに、今となってはeスポーツのオリンピックまで開催され
るようになりました。ゲーム好きな私は「いい時代になったなあ」としみじみ感じています。
Q.今後どんなイベントを企画してみたいですか?
岐:初心者と上級者の差が生まれないようなもの、例えば初心者同士の対決だったり、初心者と上級者
がペアを組んだり、誰でも気軽に参加できる空間をつくりたいです。
イ:初心者同士でも遊べるのは安心感がありますし、すごく上手な方と一緒にできるというのもめった
にない機会なので参加してみたくなりますね。
岐:やっぱり、できるだけ多くの人に楽しんでもらいたいという気持ちが一番大きいんです。例えば、
世界各国のゲームで遊びながらゲームを通じて国際交流をしたりとか。 バスケの盛り上がりを見
ていると、太田の人って熱く盛り上がれる一面があると感じたので、その熱量をもっと生かせる
ようなイベントを提案したいですね。
Q.放送作家はどんな仕事をする人ですか?
岐:テレビ番組の企画や構成を考える仕事です。番組ごとにチームで企画を立て、より多くの視聴者
の興味を引くよう内容を具体化し、出演者のやり取りの台本や、ナレーション原稿も担当します。
イ: 一から企画を考えるお仕事なんですね。企画はどのタイミングで考え始めるのでしょうか?
岐:そうですね、番組が終了するとその枠の募集が始まるので、そのときにいろいろなチームが各々
イチオシの企画を提出します。例えば、「AI × グルメ番組」とか「実はいま熱い高齢者の婚活を
テーマにした番組」など。山ほど集まった企画の中からテレビ局の担当チームが決定し、新しい
番組が始まります。
Q.現在、構成を担当している番組は何ですか?
岐:「秘密のケンミンSHOW極」(日本テレビ系列)という番組を担当していて、各地の“県民性”に迫る
企画を日々考えています。群馬県出身ということもあり「焼きまんじゅう」や「からっ風」など、
地元ネタを扱うこともたくさんあります。
イ:ケンミンSHOW、とても好きな番組でよく家族みんなで拝見しています。群馬県の話題が多いの
でうれしいです。普段テレビというと遠い世界のイメージがありますが、知っているお店や地元
の有名なお店が出てくると、なんだか急に親近感が沸いてくるんです。
岐:ありがとうございます。取材に行くスタッフの間では、群馬県民は気さくで面白い話をしてくれる
人が多いそうで、楽しい映像がたくさん撮れる場所なんですよ。
群馬ネタでいうと、以前山梨県でほうとうを食べた時、群馬県の「おっきりこみ」とそっくりなの
に、全国的にはほうとうのほうが有名なのが悔しくて。「もっと群馬のおっきりこみも知ってほし
い!」という思いを込め、「ほうとうVSおっきりこみ」という対決コーナーを提案しました。こう
した企画は、日常の中でふと感じた違和感や発見から生まれることも多いんです。
Q.他にはどんな番組を担当していますか?
岐:ゲーム実況の元祖と言われている「ゲームセンターCX」という、「よゐこ」の有野晋哉さんがメイ
ンのレトロゲーム番組があります。昔のゲームはとても難しい上に今のような攻略サイトも無かっ
たので、クリアできずに終わってしまったものも多かったんですよ。
その難しいゲームに有野さんがクリアできるまでチャレンジして、当時途中で断念してしまった視
聴者のみなさんに代わってエンディングを見せるという内容です。
小さい頃、あまりゲームを買ってもらえなかった反動で、大人になってからはあれもこれも買って
夢中でプレイする―そんなゲーム漬けの日々を送るようになってしまったのですが、そのおかげで
「ゲームセンターCX」をはじめ、ゲーム関連の番組や企画にたくさん関われるようになりました。
ゲームのシナリオを作る、いわゆる脚本の執筆も時々やらせていただいています。
イ:テレビ番組以外にも、ゲームのストーリーをつくることもあるのですね。
岐:はい。テレビだと一つのストーリーを最初から最後まで見てもらえますが、ゲームは例えば「は
い」か「いいえ」の選択肢でストーリーが変わってしまうので、選ばなかったほうのシナリオは
見てもらうことができないんです。それでも全てのパターンでストーリーを書いておかないとい
けないので、本当に贅沢なエンターテインメントだなあと、作り手になってから強く感じるよう
になりました。
Q.放送作家を目指したきっかけは何ですか?
岐:小学生の頃、はやりのゲーム機を持っていなかった私は、クラスではやっていた話題に入れず寂し
い思いをしていました。そこで「ゲームを超える面白い話をすればみんな聞いてくれるかも」と思
い、テレビ番組をよく見るようになり、次第にテレビの仕事に興味を持つようになりました。
イ:子どもの頃にはもうテレビ業界に興味を持っていたのですね。
岐:はい。でも業界の入り方が分からず、大学卒業後、試しにお笑い芸人のオーディションを受けてみ
たんです(笑)。その場で「実は芸人志望ではないんです」と打ち明けたところ、劇場の構成を手伝
う仕事をいただき、そこから放送作家としての道が始まりました。
イ:では最初はネタをつくる側ではなく、披露する側で応募されたということですか!?
岐:そうなんです。当時通っていた大学の就職担当者からは「お笑いの作り手なんて現実的じゃない
よ」と忠告されましたが(笑)。それでもお笑いやテレビ番組の制作に携わりたくて、地元で就職
をせずに思い切って上京することを決めました。
Q.どんな子ども時代を過ごしていましたか?
イ:岐部さんの著書「ボクはファミコンが欲しかったのに」にも書かれているように、子どもの頃に好
きになったことが今のお仕事に繋がっていると感じられますが、どんな子ども時代を過ごされてい
たのか教えてください。
岐:ゲーム機をなかなか買ってもらえなかった分、あれこれ工夫して遊んでいたような気がします。近
所の友だちとオリジナルゲームを考えたり、自宅ではトランプや将棋に自分なりのルールを加えて
遊んだりしていました。市内のプールやゲームセンターもたくさん思い出がありますね。
イ:本のなかで、同じ団地に住んでいた子とそのゲームをきっかけに仲良くなったというエピソードが
ありましたよね。
岐:はい。それまでは喋ったことがなかったのですが、あるとき同じマイナーなゲーム機を持っている
ことを知り、それがきっかけで親友になりました。あとは片思いだと思っていた女の子も同じゲー
ム機を持っていて、話しているうちに仲良くなって・・・なんていう淡いアバンチュールもありま
したよ(笑)。
Q.太田市のどんなところが好きですか?
岐:今はもうなくなってしまいましたが、ベルタウン(ショッピングモール)のゲームセンターや
サマーランドというプールなど、子どもの頃は、そういう場所が好きでした。よく通っていた
ので、思い出もたくさんあります。
イ:今は市内の雰囲気がだいぶ変わりましたよね。
岐:はい。ここ数年で、ミシュラン本社が移転してきたり、まちの整備も進んで、県内外からも注目
を集めるようになりましたよね。
一方で、子どもの頃を過ごした団地だけは、昔と変わらず残っていて、公園も当時のまま。三角
や丸の穴が開いたトンネルがあるのですが、子どもの頃に頭を突っ込んで抜けなくなった思い出
があって(笑)。今でも時々近くを通ると、ふと思い出します。
あとは、人の温かさみたいなものは、今も変わっていないなと感じますね。どんどん変わってい
くところも、変わらずに残っているところもある、そんな太田のまち全体が好きです。
Q.本市の特集番組をつくるとしたら、どんな企画にしたいですか?
岐:県内には珍しいドライブスルーが多いので、例えば芸人さんが「車から一切降りずにどこまで生活
できるか!?」に挑戦する企画をやってみたいです。「えー!お葬式も行けちゃうの!?」などと
驚きながら。
イ:目からうろこなドライブスルーがたくさん出てきそうですね! 見てみたいです。
岐:他にも、外国の方が多く暮らす地域でもあるので、日本文化との違いを取り上げるのも楽しそう。
外国グルメを何カ国分食べられるのか検証したり、家庭料理を紹介したり、ゲームのお供グルメを
探す企画も面白そうだと思います。ゲームをしながら手を汚さずに食べられるグルメがあったら、
「太田市×eスポーツ」のイベントとしても展開できそうです。
市民のみなさんへメッセージをお願いします!
岐:太田市の人は昔と変わらずあたたかく受け入れてくれる雰囲気があり、バスケなど一つのことに熱
狂する熱い一面もあります。新しいものが次々と生まれていて可能性のあるまちなので、eスポー
ツのイベントや特集企画にもこれからたくさん関われたらうれしいです。一緒に太田市を盛り上げ
ていきましょう!