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保護司が保護観察中の若者に自宅で殺された。5月に起きた事件がしばらく話題になった。どのテレビでも「保護司」とは、から解説が始まる。意外と知られていないのだ。私の母は長年「保護司」をやっていたが、そのことを子どもの私にもあえて言わなかった。服装を整えて、月に1、2度夕方出かける。同じ家にいても親が何をしているかまでは関心もなかったので、そんな場面に出くわしても理由を詮索したことはなかった。農業と家事が本業である母がそっと抜け出していく。全てが怪しい行動だった。帰ってきても話題にすらしなかった。何をしてきたのか聞いたこともない。「保護司」は法務大臣から委嘱を受ける。母は推薦してくれた方に感謝するとともに大臣からの委嘱をこの上ない名誉なことと思っていた。何をやってきたのか知る由もないが、単調な生活の中に張り合いのある充実の日々が過ごせたのではないか。しかも法務大臣の委嘱である。誇らしいボランティアと感じていたと思う。
「保護司」の会合に呼ばれる。総会であったり新年会であったり。あいさつをすることになる。「犯罪を犯してしまった人の再犯率は高い。彼らを社会が受け入れられるように指導する保護司の役割は大きい。いかに法務大臣からのお願いでやっているとはいえ、無給というのはいかがなものか。手当くらいは出した方がいい」。前橋保護観察所長がいるところで必ず「無給はいかがなものか」と言ってきた。法務省も考えるようになってきたと聞く。
民生委員は厚生労働大臣からの委嘱である。手当など、どうするのか。いろいろな分野にわたってさまざまな仕事を市民の皆さんにお願いしている。いろいろあるけどお願いしている全てを引き出して検討してみたい。ボランティアという名の下に無償であっていいものかなど検討するべき時ではないかと思っている。(6月13日記)